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ショートストーリー 「夏、熱、そして二人」

駅を出た瞬間、熱気がまとわりついた。

革ジャケットを着たナツキは立ち止まり、顔をしかめる。

「……これ、外に出ちゃだめなやつじゃない?」

「うん、37度だそうだ」

「数字見ただけで気力が削がれる……」

俺も額の汗をぬぐった。

さすがに、この暑さは体にこたえる。

⸻

「ねえ、アスファルト溶けてない? 歩いたら沈むんじゃない?」

「そう思えるくらい熱いな」

「だよね……あ、ジャケット脱ごうかな」

白いタンクトップ姿のナツキ、デニムスカートが張りつくほどの汗を滲ませ、肩で息をついた。

「いや……変わらん。けど脱いだ方がいいか。もう、スニーカーの中まで暑いよ」

「俺も靴の底が焼けそうだ」

「一緒だね……ちょっと安心した」

⸻

俺とナツキはコンビニに避難して、

冷房の風に吹かれながら二人で深呼吸した。

「……助かった」

「うん、生き返るってこういうことだね」

アイスコーナーを物色するナツキの横で、俺はペットボトルのお茶を手に取った。

冷えたボトルを首筋に当てると、思わず声が漏れる。

「……あぁ……」

「おじさんみたいな声出てるよ」

「歳のせいかもしれないな」

「ふふっ、わかるわかる、その気持ち」

⸻

外に戻り、二人でアイスをかじりながら歩く。

まだ熱気は重く、呼吸すらだるい。

「37度って、人間の体温超えてるよね」

「そうだな。熱が出た時みたいだ」

「そりゃしんどいわけだ……」

ナツキはアイスをかじり、俺はお茶を飲む。

無言の時間が少し続く。

「……俺も正直、今日は堪えてる」

「えっ、やられてる?」

「うん。涼しい顔はできないな」

「そっか……じゃあ一緒だ」

ナツキは少し嬉しそうに笑った。

⸻

夕方になっても、暑さは完全には引かない。

それでも並んで歩きながら、ナツキがぽつりとつぶやいた。

「……大変だけど、こうやって一緒にバテてるのも悪くないね」

「うん。分け合えば軽くなる」

「うん……」

彼女はにかっと笑い、汗に濡れた髪をかき上げた。

黒いスニーカーでとん、とアスファルトを蹴りながら。

「よし、あとちょっと頑張ろう!」

「うん。帰ったら冷たいシャワーだ」

二人で同じペースで歩き続ける。

37度の夏の中、その足取りは不思議と軽かった。


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